さぶりなの映画日記

ロックダウン生活で始めた映画のこと、アメリカ生活のこともちょっぴり

初の小津安二郎作品鑑賞。山本富士子さんと田中絹代さんについて語りたい。

小津安二郎監督の『彼岸花』を観ました。小津監督と言えば、日本映画界ではとても有名な方ですよね。ただ私は世代も違うし、小津監督の作品を今までは一度も観たことがありませんでした。今回、ユーチューブで見つけたのがきっかけで初めて観ました。

この映画は小津監督の初カラー作品だそうです。このカラーだから観る気になったのも理由の一つです。確かに60年以上前とは思えないほど色鮮やかでした。

出演は有馬稲子さん、久我美子さん、山本富士子さん、田中絹代さん、佐田啓二さん、

笠智衆さん、佐分利信さん等。

佐分利信さんの奥様が田中絹代さんでお嬢さんが有馬稲子さん、笠智衆さんのお嬢さんに久我美子さん。どちらも婚期を迎えたお嬢さんで親としては縁談話が気になるところ。ただ、親の思うとおりにはいかないもので、2人とも好きな人がいます。婚期を迎えた娘と父親の考え方の違いがテーマです。山本富士子さんは佐分利信さんが昔から使っている京都の旅館の一人娘で、こちらもお母さんがしきりに見合いをすすめてくる。佐分利信さんは他人のお嬢さん(山本富士子さん)の悩みには理解を示すものの、いざ自分の娘のこととなると結婚に賛成できないという矛盾。結婚問題が膠着状態になっていた時に山本富士子さんの「トリック」で有馬稲子さんの結婚は前進し、めでたく佐田啓二さんと結ばれます。

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最初に少し違和感があったのが、セリフの言い方がなんとなく感情がこもっていないような......「君、xxxだね。」の語尾の「だね」部分のイントネーションが違う気もしたし、「......だね」と言いつつも表情は硬くて暗い雰囲気。ただ、映画が進むにつれ気にならなくなりましたけどね。今ほど表情豊かに話さない時代だったのかもしれません。

佐分利信さんが良く言えば渋いけど、いかつくて怖い感じです。結婚を許さない設定なので重い雰囲気で話は進んでいきます。

ただ、京都の宿屋さん一家の山本富士子さんとそのお母さんが対照的に明るくこの2人が出てくると場面がカラッと明るくなります。もっともお母さんの方はおしゃべりで少し周りの人はもてあましてる感がありますけどね。山本富士子さんの美貌には本当に驚きました。商売をしているお家で育ち、客あしらいが上手くて屈託がなく役柄も似合ってましたね。

 

田中絹代さんはちょっとした表情で嬉しさや悲しさを表現していてすごいなぁと思いました。

娘の結婚に反対しているご主人と話す時は思いつめたような顔、ご主人が娘の結婚を許したと聞いた時の嬉しそうな顔、いずれも感情丸出しではないけれど明らかにその時の気持ちが顔に出ています。田中絹代さんが父親が娘の結婚に賛成したと聞いた後、一人で長唄(種類は分からないんですが邦楽)をラジオで聞いているシーンが好きです。きっと好きな歌がラジオから流れているんでしょうが、結婚問題が解決したことで晴れ晴れした表情です。その嬉しさが歌を口ずさんだり軽くテーブルを手でたたきながらリズムをとると小さな動きですが表現されていて、こちらも嬉しくなります。

 

古い映画ですが機会があったら観てみてくださいね。