さぶりなの映画日記

ロックダウン生活で始めた映画のこと、アメリカ生活のこともちょっぴり

観るまでに35年もかかった。哀れすぎるフェデリコ・フェリー二の『道』

こんにちは、今回は、名作『道』をご紹介します。

以前にも書いた通り中学時代に愛読していた映画雑誌『スクリーン』。毎年決まった付録で確か年代別名作紹介のような小冊子がありました。まだ映画が白黒だった時代からそれまでの各年の名作を紹介していたと思います。毎年ついている付録ですが、内容もほぼ毎年同じでした。白黒時代の映画では『カサブランカ』『第三の男』等が定番。その中に今回の『道』ももちろんありました。よく覚えているのが主人公の女性。白黒の時代の映画に登場する女性と言えば目鼻立ち整ってくるっと巻いた髪の毛が良く似合ういわば美女。なのに『道』の主人公はショートカットで幼い感じで非常に印象深いんだけど女性らしくない。なんか不思議そうな映画だなと思っていました。その当時は近くに映画館はないし家庭にはビデオがない時代だし、映画を観るのはテレビ放映だのみ。白黒名作はNHKがお正月に特集を組んで放映していましたが、テレビは家庭に1,2台しかないから自分の好きに観れた覚えは全くありません。今回やっと観ることが出来ました。『道』を知ってから観るまで35年もかかりました。

『道』イタリア映画 1954年

あらすじ:

大道芸人のザンバノに買われた少し頭がゆるいジェルソミーナ。ザンバノはオートバイの後ろに幌をつけた幌オートバイで力芸をしながらイタリア全国を周る。昼間は太鼓をたたいたり、ピエロの恰好をしてザンバノの芸を盛り上げる。途中で2人はサーカスに加わる。ジェルソミーナは綱渡りの青年と仲良くなり話をよくするようになる。しかし、ザンバノと綱渡りの青年は仲が良くなくケンカになり、ザンバノが殺してしまう。それから、ジェルソミーナは正気を失ってしまう。訳の分からないことをつぶやくジェルソミーナをザンバノはもてあましてしまい、とうとう彼女をある町におきざりにする。何年か経ちザンバノが海辺の町で偶然聞いたのは彼女の歌が聞こえてきた。そしてザンバノは彼女が死んだことを知る。

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この映画は悲しくて哀れです。まず、家が貧乏なジェルソミーナが売られることから始まり、芸が覚えられないジェルソミーナ、家事も出来ないジェルソミーナ。でも、お金で買われたし、自分もザンバノのいうことは聞かないといけないと分かっているから必死で明るく芸をします。観ていて痛々しいです。

ザンバノは名前の響きから連想するとおりに大男で粗野で乱暴。名前とキャラがぴったり合ってます。ジェルソミーナと彼は夫婦のように旅をしますが彼は行く先々で他の女性と肉体関係を持ちます。自分が他の女と一緒にいる間はジェルソミーナに「ここで待ってろ。」と言って当たり前のように彼女を道端で待たす。行く当てもないし、じぃっと待つ彼女のひたむきさが辛いです。

一緒に旅をしていて2人の間に愛か愛着か特別な感情は生まれなかったのか?少なくとも彼女にはそういう気持ちが生まれていました。ただザンバノにはそんなそぶりはなく、彼女に対しての感謝の念もなく彼女が彼にすることは全て当然のようにふるまっています。

でも、綱渡り青年をケンカでザンバノが殺してしまってから、彼女がうわごとを言ったり変になってしまいます。

そして、ある冬の日にとうとうザンバノは彼女が寝ている間に置き去りにして逃げてしまうんです。ジェルソミーナがその後どんな生活をしたのか想像するしか出来ません。

月日が流れ白髪頭になっても力芸をしているザンバノ。年老いても同じ芸をしているその姿も哀れです。ただジェルソミーナが死んだと知ってから海岸でザンバノがこらえられずに泣いてしまう姿はもっと哀れです。

 

最後に余談です。ザンバノのオートバイの後ろに幌をつけた幌馬車ならぬ幌オートバイ。こどもの時に耕運機で同じようなことをしている近所のおじいさんがいたことを思い出しました。そういえば最近は耕運機も見ませんね。